![シナリオ生成の要素](https://divp.net/cms/wp-content/uploads/2025/01/画像2-5.png)
シナリオ生成の要素
自動運転のシナリオ生成とは、自動運転車がさまざまな道路状況や交通状況の中でどのように動作すべきかをシミュレーションし、評価するために用意するシナリオ(状況設定)を作成するプロセスを指します。自動運転車が運転中に直面する可能性のあるさまざまなシナリオに対して適切に反応できるように、シナリオ生成は非常に重要で、自動運転車の安全性、信頼性、効率性を確認するために不可欠な役割を果たします。走行リスクを考慮したODD(Operational Desgin Domein,運行設計領域)におけるシナリオ生成を通じて、予見可能性の確保や危険なシナリオにおいても安全に運転できるシステムを開発することが、実用化に向けた鍵となります。
シナリオ生成は非常に複雑で多岐にわたります。安全性評価には以下の5つのリスク要素を含むシナリオが重要なのでそれぞれ紹介していきます。
交通状況の変化
一般道路では、他の車両、歩行者、自転車、バイクなどがどのように移動するか、交通信号や標識、道路の状態などを含みます。特に交通弱者と呼ばれる歩行者、自転車、最近では、電動キックボードなどの行動はシナリオに大きく影響します。交通参加者を配置することはもちろん、その動きや行動パターンは決まっておらず、さまざまです。歩行者は必ずしも横断歩道上を渡るとは限らず、横断歩道を渡ったとしても横断歩道がひかれていない場所から斜めに侵入してくる場合もあります。
天候条件
雨、雪、霧、風、夜間など、視界や路面状況が悪化する環境下での走行シナリオへの対応も重要です。例えば、晴れの日や雨の日、曇天の日、または雪の日の運転では同一時間帯であっても視認性や制動距離などに変化が見られます。雨の日は晴れの日よりも滑りやすくなっているため、スピードを緩める人も少なくないでしょう。あるいは日常的に運転する人でも、降雪の際の運転は注意を要します。 例えば同一の交通環境でも、時間帯によっても視認性に大きな変化が見られます。昼間ははっきりと100m以上先まで見えていた場合でも、夜間になれば視認性が落ちて、前照灯を使用しなければ前方の状況を把握できなくなってしまいます。また昼間であっても、逆光の場合視認性が格段に落ちてしまいます(図1)。
![](https://divp.net/cms/wp-content/uploads/2025/01/画像1-3.png)
(図1)晴れの日の逆光にかかるシミュレーション
上記の通り、天候や昼夜の変化は、人間が自動車を運転する際にも影響を及ぼすだけでなく、自動運転のカメラ、LiDAR、Radarなどの周辺監視センサにおいても重要なシナリオ要素となっています。
障害物や突発的な事象
例えば、道路に障害物が現れる、他の車両が急停止する、動物が道路に飛び出してくるといった予期せぬ出来事など、突発的な不測の事態への対応も自動運転にとって重要です。予防安全の技術の進化によって、この様なシナリオへの対応システムが充実してきましたが、自動運転でもこれまで以上に知能化された技術により対応が必要なシナリオ要素です。 また、突発的な危険状態でなくとも、工事中や事故による車線規制などの、一時的なパイロン規制なども自動運転にとって対応しなければならないシナリオ要素と言えます。特に、高速道路では、タイヤや段ボールなど落下物への対応もシナリオ事象として考慮しなければなりません。
運転者や周囲の車両とのインタラクション
一口に交通流といっても、その自動運転車と他の運転者や車両との相互作用がどのようになり、どう対応するかは複雑な世界です。例えば、高速道路などでは、追越しや割り込みや道を譲る場合など、自車と周囲の車両(トラック、乗用車、バイク等)とのインタラクションへの対応は自動運転車にとっても重要な案件となります。更に、一般道路での交通流は、他の交通参加者との関係性や、信号機や交差点の一時停止など、ルールに沿った対応も必要となり、このそれぞれの車速域や減速・加速など、定量的パラメータを含むシナリオへの反映はますます重要となってきます。
緊急事態の対応
故障、事故、急病など、緊急事態にどう対応するかのシナリオも自動運転車が対応しなければ要件となります。このように多様なシナリオには、事故の発生や、緊急車両の接近なども予め決めておく必要があります。また、普段は片側2車線の道路であっても事故が発生したために1車線に変更になっている場合もあります。あるいは緊急車両が接近し、信号は青でも待機が望ましい場合もあります。このようにいつ、どこで発生するかわからない事象を考慮し、それに対する適切な反応を検討していく必要があります。
-
1978年早稲田大学理工学部卒業。トヨタ自動車(株)入社。車両制御開発室長、統合システム開発部 部長、先端・先行企画室長(部長級)等を歴任。先進安全/車両統合制御システムの開発に従事。2009年米国NHTSAより「The US Government Award」を受賞。 2016年日本機械学会 業績賞。2013年~東京農工大学 機械システム工学専攻 客員教授。2016年トヨタ自動車退社。神奈川工科大学 機械システム工学専攻、創造工学部、教授に就任。同大学 研究推進機構 先進自動車研究所 所長/特任教授として、現在に至る。
この記事をシェアする
SNS
DIVP技術セミナーの詳細や今後のイベント等をSNSで投稿予定です。
カテゴリー
![シナリオ生成](https://divp.net/cms/wp-content/themes/divp/assets/images/common/scenario-generation.webp)